INTERVIEW 16
研究職員 工業技術センター 機械電子研究所
県内企業に寄り添い、
産業の発展に貢献する。
Profile
田尻 智基 入庁4年目
大学で機械工学を学び、大学院に進む。修了後は大手重機メーカーに入社。
船舶の製造に携わる中で「もっと機械系の研究をしたい」という想いが強まり、転職を決意する。
令和2年度に研究職員として入庁し、現職に至る。
―仕事内容を教えてください
福岡県工業技術センターは、県内企業の発展を支援するために共同で研究開発を行う機関です。
また、技術相談や試験分析も行うほか、人材育成にも取り組んでいます。
例えば試験分析においては、3Dデジタイザーや表面形状測定装置のような中小企業が独自に保有することが難しい設備を備えているので、それらを使っていただくという形で企業の支援ができていると思います。
福岡県の中でも、特に北九州地域は自動車産業や鉄鋼業が盛んなので、この地で技術の研究ができることにとてもやりがいを感じます。
―仕事で印象に残っていることはありますか?
私の主な研究内容は「金属粉末射出成型」というもので、金属の粉末と樹脂を混ぜたものを金型に射出して成型する技術です。
この技術は、切削が難しい材料でも高い精度で成型でき、幅広い産業に活用できる可能性を秘めています。
私が入庁した当初はその研究装置がなく、自分で工夫して研究装置を製作し、同僚にも手伝ってもらいながら、基礎研究に取り組みました。
研究を続ける中できちんと予算がつき、本格的な装置が導入されたときは嬉しかったですね。
―働きやすさを感じる点を教えてください
研究を進めていく中で、予想と違う結果が出ることもあります。
しかし、それは失敗ということではなく、次につなげるための種になるものです。
その活かし方を考える上では、自分一人ではなく誰かの意見を聴くことも大切だと思っています。
当センターにはさまざまな専門性を持つ研究職員がいるので、そういった相談相手には困らないですね。
また、月に一度は勉強会が開かれ、課内でどのような研究が行われているかの情報共有の場になっています。
このような環境が、一人の研究職員としてとても恵まれていると感じています。
―入庁前後でイメージのギャップを
感じるところはありますか?
かつてメーカーに勤務していた私からすると、自分が研究したいことに力を入れられるというのは大きな驚きでした。
もっと研究をしたいと転職したものの、公的な機関なので研究内容はある程度決められたものだと思っていました。
しかし、決まった仕事はあるものの、「中小企業の支援につながること」であれば自ら手を挙げて研究内容を決めて取り組むことができて、今は本当に毎日が楽しいですし、仕事にやりがいを感じます。
ちなみに、他県の研究職員として勤める友人と話していると、福岡県は比較的予算にも恵まれているようです。
―福岡県の職員として実現・達成したことを教えてください
令和4年度の「モノづくりフェア2022」で、私たち機械電子研究所が事務局を行っている「福岡県金型研究会」のブースを出展しました。
九州最大級の産業見本市で産官学連携による技術力をしっかりとPRしたことで、ブースに立ち寄られた方から「すごい!」と声をかけていただいた経験は、研究へのモチベーションにもなりました。
また、自分の研究を進める一方で、企業の方からの依頼や相談に応えてきたこと、新たに業界に入られた方への研修を通して人材育成に携わってきたことにも自負があります。
―今後、取り組んでみたい仕事はありますか?
まったく新しい研究に取り組むというよりは、今進めている「金属粉末射出成型」の研究をより深めて、いつか製品化・商品化という成果につなげていきたいと考えています。
まだまだ先は長いですが、やはりそれが研究者としての大きな目標です。
そのためには、技術そのもの以外に市場調査や動向予測、企業との連携がより重要になると思います。
それはひと言で言えば「社会ニーズとどうマッチングできるか」です。
その意味でも、モノづくりフェアをはじめ、全国規模の展示会などにも積極的に参加して学び続けたいと思っています。
研究職員を目指す方は、大学院で専門的な分野を学んでいたり、企業に勤務されたりしている方が多いと思います。
そういった意味で今は、割とひとつのことに注力されていると思いますが、福岡県の研究職員には幅広い分野の専門家がいるので、自身の視野も広がり、成長できる環境です。
ぜひ福岡の産業発展のために研究に取り組み、私たちとともに成長していきましょう!